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2026年04月24日

いざという時のために、防災館での実体験から学ぶ!都市型水害の脅威と対策

その時、どう動く?いざという時に備えて、都市型水害を実際に体験してみよう

 【前編】では、都市型水害のメカニズムと、企業が備えるべき視点と主要都市についてお届けしました。とはいえ知識としてはわかっていても、実際にその時が来ると想定通りに行動できないということも少なくありません。全国の自治体には、いざと言う時のためのシミュレーションができる体験施設がいくつも設けられています。今回は東京消防庁が運営する「本所防災館」(東京都墨田区)に行ってきました。

今回参加したメンバー(メイン写真左から):
サービス推進部 ソリューション企画担当 元林 功
サービス推進部 ソリューション企画担当 萱沼 範行
首都圏第一事業部 芝浦営業所 伊藤 七緒


★前回のコラムはこちら
突然、見えない水が街を襲う!?都市型水害の脅威と対策

「水」の重さを実感。逃げ遅れないことの重要性を学ぶ

 東京消防庁には3つの防災館があり、楽しみながら防災に関する知識や技術を学ぶことができます。なかでも「本所防災館」には「暴風雨・都市型水害コース」という体験メニューがあり、都市型水害に遭遇した際の体験をすることができます。

“数字”ではなく“体”で知る暴風雨の脅威

「暴風雨体験コーナー」では、 時間雨量50ミリ、風速毎秒30メートルという、台風の時のような雨と風を体験しました。

参加者は長靴を履き、ファスナーが二重になった特注のレインコートを着て室内に入ります。合図とともに前から風と雨が容赦なく吹き付けてきて、安全バーを握る手に力が入ります。実際に外でこの状態になったらとても傘は役に立ちません。フードの口元までボタンをしっかり留めて姿勢を低くしていても、吹き込む雨で顔や髪が濡れてしまいました。
 最近では日本でも1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降ることがあり「これくらいの“土砂降り”は経験がある」という声も聞かれましたが、もし夜間だったら?子ども連れだったら?荷物を持っていたら?と考えると、台風の際に、暴風雨の中を避難することのリスクを考えさせられます。

 台風や暴風雨はあらかじめ接近することがわかります。雨量が多く危険が予測される場合は、雨がひどくならないうちに早めに避難することが大切。また夜間や豪雨の最中は、屋外に出ず家の中にとどまっていた方がよさそうです。

押しても開かない――浸水した非常口の現実

都市型水害体験コーナーでは、局地的集中豪雨(ゲリラ豪雨)や津波に関する映像を見た後、地下に閉じ込められるという恐怖を体験しました。

 浸水した地下室に閉じ込められた想定で、中からドアを開ける体験を行いました。浸水の深さ10㎝、20㎝、30㎝の3つの設定メニューがあり、人が一人通り抜けられるくらいまで開けられればブザーが鳴って終了です。
女性は10㎝、男性は30㎝にチャレンジする人が多いようですが、力任せに押すだけではびくともしません。ポイントは両手を揃えてドアの外側に近いところに当て、下から上に押し上げるように力を込めること。正しい方法を知っていれば、女性でも20㎝の浸水時のドアを開けることができました。

 雨が降っている間、水はどんどん流れ込んできて、あっという間に開けられなくなります。また雨がやんでも自然と水がはけることはありません。地下室や地下街などは一見安全なように思えますが、都市型水害の際には閉じ込めリスクが高くなります。外出時に豪雨に遭遇した際には「この場所はまとまった雨が降り続いても安全かどうか」をよく見極め、少しでもリスクを感じたら早めに外に出ることが大切になります。

 車に乗っている最中に水害に遭遇した場合を想定し、ドアを開ける体験もありました。実際、車に乗っている時によく豪雨や地震による津波に遭遇する可能性もあるでしょう。その際に怖いのが線路や道路が交差する場所の下にあるアンダーパスや、周囲より地面が低くなっている場所で冠水してしまうこと。雨水や津波の海水は濁っているため、水深がどれくらいあるかわかりづらく、うっかり通り過ぎようとして冠水してしまうケースは決して少なくありません。
万が一冠水して動けなくなってしまった場合、何よりも大切なのは焦らないこと。落ち着いて行動することが必要だと説明がありました。

車外に出る方法としては、ドアを開けるか窓を割るかの2つ。車のドアを開ける際は、先ほどと同じく力任せに押すだけではダメだとのこと。ただし座っている状態では踏ん張ることが難しいため、片方の手をハンドルやダッシュボードなどに押し当て、そこを支点として、ドアに体重をかけます。
 車の中に脱出用ハンマーが常備してあれば窓を割って出ることができますが、もしなければ、ヘッドレストの柄の部分を窓ガラスの隙間にこじ入れ、てこの原理を使って割るという方法もあります。

地震や火災の体験も。リアルな恐怖に対策の必然性を実感した

 水害は豪雨によるものとは限らず、地震に伴う津波の場合もあります。また、台風や地震などの後には「通電火災」が起きる場合もあります。災害時、送電線の断絶などが原因で停電が発生することがあり、その後数時間から数日後に電気の供給が回復し、浸水や雨漏りで濡れた電気器具や、破損した電気配線に通電した時に火災が発生するのです。
 都市型水害に対する備えといっても水に対するものだけでなく、地震や火災などに対する幅広い対策が必要になるケースがあるということで、地震体験と、火災時の避難体験も行いました。

頭ではわかっていても、体が動かない

地震体験コーナーでは、関東大震災クラスの震度6と、熊本地震クラスの震度7の揺れを実際に体験しました。

 まずは室内にあるマットの上で、ひじとひざ、足の甲を床につけて手で頭を守る「ダンゴムシ」のポーズをとります。
 緊急避難速報が鳴り床全体が動き始めると、内臓が搔きまわされるような激しい揺れに、放り出されないように這いつくばっているのが精いっぱい。立ち上がって逃げることはもちろん、頭を上げて様子をうかがうこともできません。まわりには倒れてくるものが何もない安全な空間で1分間だけの体験だと頭ではわかっているのに、とてつもない恐怖がこみ上げてきました。
 参加者は体験後「起震車は何度か経験したことがあるけど、これほどリアルに恐怖を感じたことはない」「しゃがんだ姿勢で揺れ始めたのでなんとか耐えられた。もし戸外で歩いている時などに発生したらどうなっているかと考えると……」「地震速報があったらすぐにこの姿勢になることが必要」など、口々に語っていました。

緊急地震速報が鳴ったらすぐに低い姿勢をとらないと、揺れが始まってからでは動くこともできません。様子見している余裕はありません。「今までは大丈夫だったから」と油断せず、毎回「もし最大震度の地震が起こったら」という気持ちを持つことが、自分と周囲の人たちの身を守ることにつながります。

“かがんで逃げる”は簡単ではない

煙体験コーナーでは、煙の特性や危険性の説明を聞いたあと、火事により発生した煙が充満する空間で姿勢を低くしながら逃げるという体験をしました。

 建物内で火事に遭遇した場合、怖いのは火よりも煙であることが多いと言われています。火事で発生する煙には一酸化炭素が含まれていて、高濃度の一酸化炭素や有毒ガスを吸い込むと呼吸困難に陥ってしまうことがあるからです。火災で発生した煙は、天井に一時的に溜まり、そこから徐々に下に降りてきます。そのため、煙が流れ込んでいる空間では姿勢を低くして逃げることが必要になります。
 体験ではグループごとに火災時の煙に見立てた無害な煙が充満した部屋に入り、夜間を想定した暗い通路を通って出口まで避難しました。部屋の上は煙の濃度が濃いものの、下のほうはそれほどでもなく比較的見通しもききます。
 ところが、上背のある大人が姿勢を低くしたまま進むのは想定以上に疲れるのです。健康な人ならともかく高齢者や怪我をした人、障がいを持った人などはまわりのサポートが必要になるでしょう。また暗い通路では方向感覚を失わないよう片方の手を壁に沿わせて進むのですが、子ども連れの方は難しいのではないでしょうか。さらに、姿勢を低くしていることで壁の上部にある避難口の方向を示す通路誘導灯に気付きづらく、途中で右往左往してしまうこともありました。

火事を始めとする災害時、避難する際に大切な4つのキーワードを教わりました。
「お」…押さない(焦って周囲の人を押さない)
「か」…駆けない(走らない)
「し」…喋らない(むやみに喋らず静かに行動をする)
「も」…戻らない(忘れ物などを取りに戻らない)
これは保育園や学校で子どもたちに教えられていることだそうですが、大人にも通じるポイントです。

物品だけではなく「知識の備え」が必要との声も

今回参加したみなさんに、感想を聞いてみました。

伊藤さん:今日改めて感じたのは、水害の怖さですね。日本は普段から雨も多いですし、季節によっては豪雨になることも珍しくないので、どこか慣れてしまっているところがありましたが、それではいけないなと。個人的にはまずしっかりとした長靴を自宅と職場に一つずつ用意しようかと思っています。おしゃれなレインシューズは持っていますが、それだといざという時に役に立ちそうにないので。
 また災害は「起こってしまったことに遭遇する」ものだと思いがちですが、最近話題になっているモバイルバッテリーが原因の火災など、自分が起こす側になることもありえます。その点についても知識の見直しが必要だと感じました。仕事ではテナント様に災害のリスクや起きた際の対応について説明をする立場なので、今日感じたことを活かしていきたいと思います。

元林さん:東京で暮らしていると今まで水害に遭遇するイメージはありませんでしたが、今回体験してみて地下の駐車場などは案外リスクが高いなと感じました。仕事では従業員と事業資産を守る備蓄品などの提案をしていますが、普段関わっているオフィスビルや商業施設などは地下に駐車場があるところも少なくないので、そういった方々に今日の経験をふまえてどのような備えをしておくべきかの提案をいま一度考えてみたいと思います。
 特に東京は海抜ゼロメートル地帯に多くの建物が建っていますから、本当に誰にとっても他人事ではないですね。また最近では、熱中症や熊などによる獣害被害も増えています。そういうものも自然災害の一つと考えると、すぐそばにある危険に対して、日頃からどう備えておくかはとても重要なことだと思いました。

萱沼さん:今日は水害だけでなく地震や火事など幅広い災害に対しての経験ができてとても貴重な機会になったと思います。日本は災害大国と言われているくらいさまざまな自然災害の可能性がありますが、逆に言えば私たちは災害という言葉からパッと思いつくことだけを準備している面もあるので、具体的にどういうことが起きた時のために何をすべきか、どういう準備をしておかなければいけないか、ということを細かく考えておかなければいけないなと実感しました。
 それが個人ならば自分だけでなく家族、企業であれば社員や社員の家族にまで想定の範囲を広げておく必要があります。また、備えるというとどうしても物品をイメージしがちですし、私たちも仕事として主に備蓄品の提案をしていますが、今日あらためて「知識を備える」重要性に気付けたので、今後は災害のリスクや対策を伝える啓もう活動にも力を入れていきたいと思います。

自社の水害対策を今一度見直してみよう

 東京消防庁「本所防災館」をはじめ、無料で利用できる災害体験施設は、全国各地にあります。個人で訪れるだけでなく、町会・自治会の防火防災訓練や、学校や企業新入社員に対する防災教育などにも活用されています。
 「できれば若い人たちにぜひ体験してほしい。また、我々のような大人も生活経験が豊富にある分、どうしても『今までも大丈夫だったのだから今回も大丈夫』と油断してしまいがちなので、改めてこういう機会を持つことは重要です」と元林さんが言うように、どの世代にとっても、役立つ体験であることは間違いありません。
 今回は暴風雨や都市型水害をテーマにしましたが、当社はオフィスビルや商業施設、マンションをはじめとする集合住宅におけるプロパティマネジメントのプロとして、風水害を含めた防災計画の策定・実施、各種備品の調達など、「企業防災」に関するあらゆるご相談を承っております。今後も、お客様に安心してご入居いただけるよう、防災・減災対策のさらなる強化に努めてまいります。

★今回訪れた防災施設:本所防災館(外部リンク)
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/taiken/honjo/
場  所:〒130-0003 東京都墨田区横川4-6-6
開館時間:9:00〜17:00(入館受付は16:45まで)
防災体験ツアーは予約制です。詳細は上記サイトまで

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