お役立ちコラム

ワークプレイス分野

2022年11月30日

ワークプレイス構築のヒントがいっぱい、本社オフィス仮想ツアー  (前編)

トップがやると決めた瞬間から、社員全員の一大事になるのが
オフィスの移転・構築でしょう。しかし、計画の検討も含めて、
何から手をつければいいのか、お悩みの方は多いのではないでしょうか。何度か経験を重ねていても、毎回ひと苦労されていることと思います。
今回のコラムでは、私たちの本社オフィス移転プロジェクトを実例として、その際に行ったオフィスプランニングや工事の進め方などを前編、実際のオフィスを後編に分けてご紹介します。
プロジェクトを担当した首都圏第一事業部 首都圏建築設備担当 増田と、リレーション推進本部 サービス推進部 近藤の両名に
オフィス移転の目的や、プロジェクトを進めていく上でのポイントを語ってもらいました。
みなさまのオフィスづくりの参考になれば幸いです。                        

                              【お客さまエントランス前で近藤(左)、増田(右)の両名とともに】

オフィス移転・構築において重要なのはプロセスの最適化

 リモートワークの普及、オンライン会議の増加、感染対策の徹底などを行う必要から、オフィスの在り方は大きく変わってきました。そのため、現在のオフィス環境に課題があり、新たなワークプレイス(以下、WP)の構築やオフィスの移転などを検討・計画している企業も多いのではないでしょうか。

 オフィスの移転が初めての場合は、何から始めればいいのか分からないといった声がよく聞かれます。また、移転を何度か経験したことがある企業でも、ノウハウが蓄積されていることは少なく、結局は手探りのまま進めてしまっているのではないでしょうか。短期間のうちに入居契約や工事契約、購買など数多くの意思決定を迫られ、工事中も内装、設備、什器、通信それぞれの委託会社との個別協議や全体調整が必要になるなど、自社の作業や進行管理の稼働、費用などが「想定よりかなりの負担になった」と感じる担当者も多いようです。作業工程の効率化、稼働とコストの低減は、オフィス移転・構築を考える際の大きな課題といえるでしょう。

 私たちは2021年7月に新会社へと移行し、翌年1月に本社オフィスの移転を行いました。その間、約半年という限られた時間の中、いかに効率的に移転関連業務を進めていくかという点が大きなテーマでした。オフィス移転は、ビルの選定から始まり、入居の条件交渉・契約締結、オフィスプランニングや専有部の工事契約・実施、移転(引っ越し)へと進みますが、各種業務をトータルにマネジメントすることが重要になります。それにより、複雑なプロセスを最適化し、プロジェクト担当者の業務負荷軽減に貢献することができるのです。

 それでは具体的に、どのようにプランニングし、どのようなロードマップでプロジェクトを成功させたのか。増田・近藤の両名に話を聞きながらポイントを整理していきましょう。

本社オフィスの課題解決とショーケース化を目的とした移転プロジェクト

 私たちは、昨年の7~12月の半年間にわたり移転プロジェクトを進め、「秋葉原UDX」(東京都千代田区)にあった旧オフィスから、JR田町駅に近い「グランパークタワー」(東京都港区)の13階に本社オフィスを移転しました。移転した背景について、増田は「旧オフィスでは以前から課題があった」と振り返ります。

増田:
「前身の会社(NTT都市開発ビルサービス株式会社)では、従業員は毎年のように増加しており、新会社発足時点では約900㎡のオフィスに260人ほどが在籍し、座席も固定席だったため、かなり手狭になっていました。また、新型コロナウイルスの感染対策として座席間の距離を取る必要があり、ついには席が足りなくなってしまったのです。実際、会議室なども執務席として転用する状態にあり、これでは今後の業務に支障をきたすということで移転の検討が始まりました。その後、総務主導で移転プロジェクトが開始されましたが、せっかくの機会ですので、課題解決をさらに一歩進め、本社オフィスで新しい働き方を実現し、お客さまにお見せできるショーケースにしようという話になりました」


【当時の課題を振り返る首都圏第一事業部 首都圏建築設備担当 増田】

 移転プロジェクトを始めるにあたり、総務がプロジェクトリーダー/PMを担当し、組織の垣根を超えたメンバーによるワーキンググループが発足しました。ワーキンググループでは、週に1回定例会を開催し、ワークプレイス構築や導入するソリューションに関する議論を重ねていきました。また、設計・ICT機器・AV関連と3つの分科会をグループ内に設け、定例会とは別に、週に1度話し合いを行いました。分科会での議論について、増田は以下のように語ります。

増田:
「分科会では、あらかじめ課題項目をピックアップしておき、その項目を1つずつ議論して解決し、全体定例で報告するという形で進めました。こうした話し合いで一番重視したのが、経営陣の方向性や方針などを踏まえ、私たち自身がどうなっていきたいか、そして、それを叶えるにはどのような働き方がベストなのか、という視点です。そうしたことを常に念頭に置きながらオフィスプランニングを行っていくことが大事だと考えます。その上で、スケジュールを意識して準備を進めていくことですね」

 ワーキンググループで新オフィスの方向性を決定した後は、いよいよ工事です。レイアウトプランや什器の選定は、建築担当とパートナー会社で行い、協力会社とともに、工事と並行して進めていきました。


◯「秋葉原UDX」物件詳細はこちら


◯「グランパークタワー」物件詳細はこちら

移転・構築工事を進めていく上で注目すべきポイントは

 オフィス移転を行う際の工事は、A工事(オーナー負担ビル工事)、B工事(テナント負担ビル工事)、C工事(テナント工事)と大きく分けて3つあります。オーナー側の負担で実施するA工事は、基本的には修繕工事等が主となりますが、専有部を含めた建物全体のバリューアップのための整備工事が行われることもあります。今回でいえば、蛍光灯だった照明が明るさセンサー付きの調光式LED照明に更改されました。今回のA工事について、近藤は以下のように話します。

近藤:
「オフィスビルは常に新しくしていかないと市場価値を保てないという側面がありますので、設備更改などは適宜行なわれています。ただ、専有部内での大掛かりな工事は、お客さまが入居している間は実施が難しいので、前の方が退去後、次の方が入るタイミングで工事を行うことになります。今回、多機能なLED照明に更改されたことは、省エネやエネルギーのグリーン化を推進する当社にとって、非常にありがたいことでした。ビルオーナーが将来に向けてどのような目線で投資を考えているのかを知ることも、ビルを選定する際の基準のひとつになると考えています」


                        

                        【お客さまの要望も想定しながら話すリレーション推進本部 サービス推進部 近藤】

 A工事の後に行うB工事では、間仕切り、内装、電気、空調、衛生設備工事などを行います。B工事はテナントの負担になる工事なので、ここでは入居するテナント側も慎重に確認する必要があります。今回のB工事は「少し特殊な条件があった」と増田は振り返ります。

増田:
「今回のビルは特例により、床から高さ1500mm以上のものは散水障害になるため、家具や植栽の高さに注意しました。そうした制限を考慮してオフィスレイアウトをしなければ、スプリンクラーの移設・増設工事が増えてしまうかもしれません。こうしたビルそれぞれの特性や制限を知った上でプランニングを進めるということもB工事の計画をスムーズに進めるための重要なポイントになります。私たち自身がB工事の指定工事会社だという強みを活かせた部分でした」

 新築時の特例等により、ビルにはさまざまな制限がかかっていることがあります。また、ビル全体での仕様の統一や工事の利便性、原状回復工事の施工性などの観点から、B工事はビル指定工事会社で実施します。詳細については、ビルごとに工事区分が定められていますので、入居前に確認する必要があります。

 B工事とほぼ並行して進むC工事では、什器選定、通信設備の導入、ICT機器の設置、移転などを行います。入居者が作りたいオフィスへの想いが最も色濃く反映される部分であるといえるでしょう。近藤・増田の両名はこのC工事における想いを以下のように語ります。

近藤:
「私たちは、オフィスプランニングの段階からCASBEE-SWO認証(※)の取得を視野に入れ、従業員のウェルビーイングの要素を多分に取り入れて計画を進めました。場所の性格に応じた使い勝手が良い什器を選定したり、オフィス全体に植栽を施してストレスの軽減や生産性向上の効果が期待できるバイオフィリックデザインを重視したことも、こうした狙いがあったからです。計画内容にこれらを反映することができた結果、CASBEE-SWO認証の最高位であるSランクを取得できました。現在は“新しい働き方”を自らが実践・検証するためのマネジメントラボとして、また、お客さまへ“新しい働き方”を提示するショーケースとしてオフィスの運用・改善を続けています」

増田:
「オフィスプランニングを行う期間は、想定しているより長めに取る方が良いと思います。今回のプロジェクトでも議論を進めていく中で、さまざまなアイデアが出ました。例えば、入口に設置したウェルカムボードは、最初はサイネージを設置するだけで十分と考えていましたが、もっと街づくりを表現したいということで、日本国内の紡績工場で出た「落ちわた」100%で紡いだリサイクルコットンを使用した糸で、社員参加型のアートを作り上げました。さまざまなものが絡み合うのが“街づくり”というメッセージを込めています。計画が具体化するにつれて出てくるさまざまな工夫やアイデアを反映できるように、ある程度は計画の柔軟性とコスト的な余裕を持つことが大切です」


【オフィスエントランスで来客者を出迎えるウェルカムボード】

 私たちNTTアーバンバリューサポートは、オフィスの移転・構築に関するプロジェクトマネジメント業務、WP設計・構築、ICTサービスや各種ソリューションの導入支援、その後のプロパティマネジメント業務まで、幅広いサポートが可能です。当社の「オフィス構築・移転トータルサポート」では、ビル選定が終わった直後から、条件交渉や契約締結と並行しながら、オフィスプランニングや工事の事前準備・調整を行い、働き方をサポートする各種ソリューションの導入検討までを行っていきます。こうすることで、1つひとつの工程をクリアしてから次の工程へ進んでいく従来のやり方に比べ、タイムリーな意思決定や設計・工事の効率アップによるコストダウンと早期入居を実現できます。また、入居するまでがゴールではなく、その後の運用や改善の仕組みづくりまでサポートすることで、よりお客様のワークスタイルに適したオフィスを作ることが可能になります。

 オフィスプランニングを早い段階から行うため、プロジェクトを進めていく上で増えていくアイデアや急なトラブルなどにも柔軟に対応することができます。これは他でもない、私たち自身が本社移転プロジェクト実施により、身をもって体験することができました。もし、スケジュール的に厳しい場合でも、お客さまの理想に寄り添いながら、最適な案をご提案します。

後編では、実際の本社オフィスはどのようなものになったのか、導入されたソリューション、移転後の運用改善に至るまで、詳しくご紹介します。次回のコラムをお楽しみに。

※CASBEE-SWO認証(CASBEE-スマートウェルネスオフィス評価認証)
一般財団法人住宅・建築 SDGs 推進センター(IBECs)が主催し、建物利用者の健康性・快適性・知的生産性等を支える、建物の仕様/性能/取組みを評価するとともに、建物の環境性能等を含めた総合的な評価を認証する制度。


※弊社ニュースリリースはこちら

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<本移転プロジェクトで達成した主な効果>
・専有面積約1800㎡(545坪)に所属従業員280名の収容力を確保
・一人当たり席面積は移転前3㎡から移転後4.28㎡に向上(出社率7割に設定/執務スペースおよび共有スペースに限る)
・CASBEE-SWO(スマートウェルネスオフィス)認証の最高位“Sランク”を取得
・エネルギー利用量を「見える化」し、省エネの取り組みの効果把握や執務者の環境意識醸成
・「新しい働き方」をお客さまに提案できるモデルオフィス化の実現
・「新しい働き方」を自ら実践・検証するマネジメントラボとしての役割を付加