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プロパティマネジメント

知っておきたい「電気代高騰の背景」と「成果につながる省エネ策」

電力難民、電力需給ひっ迫注意報、節電要請、節電プログラム……電力不足に関わるニュースが日々飛び交うなか、国内の電気料金は過去5年で最高水準に達しています。なぜ、電気料金はここまで高くなっているのでしょうか? そして、企業はこの“非常事態”にどのように立ち向かっていくべきなのでしょうか。当社で取り組んだ地道な省エネ事例とあわせてご紹介します。

■1年で約30%値上がりした電気料金、なぜ高騰が続いているのか?

日本の電気料金は、1年前と比較して最大約30%上昇しています(大手電力会社の場合)。なぜ、国内の電気料金はこれほど値上がりをしているのでしょうか。背景には、「燃料費調整額」と「再エネ賦課金」の上昇があります。

電気料金は、基本料金と電力量料金(利用した分の料金)に、利用量に応じた燃料費調整額(燃料費調整単価×1ヶ月の使用電力量)と再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×1ヶ月の使用電力量)を加えて算出されています。

燃料費調整単価とは、発電に利用する「燃料価格の変動」を電気料金に反映する仕組みであり、毎月見直されます。航空運賃に含まれる燃油サーチャージと同じような仕組みです。燃料となるLNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)や石炭の価格上昇の影響を受けて、燃料費調整単価は、ほとんどの大手電力会社において2021年1月から増え続けています。国内の発電状況をみると、2022年3月における日本の発電電力量の内訳は、LNGが約37%、石炭は約34%を占めています。ご存じの通り、日本ではLNGや石炭のほとんどを輸入に頼っているため、燃料価格の高騰に比例して電気料金も値上がりしてしまいます。また、大手電力会社の中には、燃料費調整単価の制度上の上限に達し、さらに値上げをしたくてもできない状況となっており、制度自体の見直しも議論されています。

もうひとつの再エネ賦課金は、再生可能エネルギーによって発電された電力を電力会社が買い取る費用を、消費者も負担する仕組みです。再エネ賦課金の単価は、毎年経済産業省によって見直され、2012年に1kWhあたり0.22円だったものが2022年5月からは3.45円と、毎年上がり続けています。再生可能エネルギーを用いた発電設備は増加傾向にあるので、再エネ賦課金の単価も上がり続けています。

このように、燃料価格の高騰と、再エネ設備の普及が進んでいることが、昨今の電気料金の高騰に関係しています。世界経済・政治の情勢に、現状、大きな変化の兆しが見えないこともあり、電気料金は秋から冬にかけてしばらく高止まりすると予測されています。

■自社オフィスでの省エネの取り組み

今後も電気料金の高騰や電力需給のひっ迫が続くと想定されるなか、企業はどのように対応すべきでしょうか。簡単で効果的な対応策はなく、これまで通り地道な省エネの取り組みが求められます。省エネと聞くと、何かを我慢する、生産性を犠牲にするなど、ネガティブな印象をお持ちの方もいるかもしれません。今回私たちは、自社オフィスにて、生産性を落とさないように注意をしながら、地道に省エネに取り組んでみました。その実例をいくつかご紹介します。

①機器の省エネモード使用の徹底や台数の見直し

オフィスに設置された給水機や冷蔵庫、コピー機等は一般的に“省エネモード”を有しており、そのほとんどは簡単な操作で設定ができます。当社オフィスにも未設定の機器があったため、省エネモードをONにしました。皆さまのオフィスにも省エネモードが未設定の機器があるかもしれません。今一度、確認してみてはいかがでしょうか。
また、コロナ禍でリモートワークが広がったことにより出社人数が減少している場合、余剰な機器があるかもしれません。この機会に、必要台数を見直してみてはいかがでしょうか。
給水機や給茶機の夜間・休日のコンセントタイマーを用いた電源OFFも考えましたが、衛生上問題が発生する可能性が高いため、実施は見送りました。機器仕様によっては実施できる可能性もあるので、機器ごとに確認してみてはいかがでしょうか。

②冷蔵ショーケースの設定温度緩和

当社オフィスには飲み物や持参した弁当を冷やすための冷蔵ショーケースがあり、その設定温度を5℃から8℃に緩和しました。コンビニの冷蔵ショーケースの設定温度は一般的に8℃前後のようです。また、改正食品衛生法で義務化された飲食店のHACCP※によると、冷蔵温度は10℃以下であることが求められているため、今回の設定温度8℃は妥当な温度だと考えています。皆さまのオフィスにも、冷やし過ぎている冷蔵庫や冷蔵ショーケースがあるのではないでしょうか。また、飲みかけのまま長いあいだ放置されている飲み物など、それらを冷やすことで無駄な電力を使用していますので、定期的に捨てる作業も重要です。
(※HACCP:衛生管理の国際的な手法)

③サーバー室の設定温度緩和

当社サーバー室の空調機は、サーバー類の発熱量が小さいにもかかわらず、22℃・強風の設定で運転をしており、室内が過剰に冷えた状態となっていたため、25℃・弱風に設定を変更しました。サーバー室の状況によっては、サーバーの吸い込む冷気と、サーバーの高温排気を物理的に分離する“吸排分離”や“気流改善”も省エネの有効な手段です。なお、設定温度を変更するときは、サーバーの吸い込み温度が高温にならないよう注意を払いながら、設定温度を1℃ずつ、時間をかけて変更することが重要です。

これらの地道な取り組みの効果検証は、日々出社人数が変化する日勤帯での比較が難しかったため、執務者がいない夜間のベース電力を用いて実施しました。結果として、約7.5%の省エネ効果を確認できました。今後は、照明の照度変更や執務室の空調設定温度の緩和などについても、執務者の生産性への影響を考慮しながら取り組んでいきたいと考えています。

■電力を“見える化”すれば、省エネの成果も簡単にわかる

こうした省エネの取り組みにおいて、注目が高まっているのが“電力の見える化”です。毎月の電気料金の増減だけを頼りに、省エネの効果を把握することは容易ではありません。しかし、「電力をいつ、どこで、どのくらい使っているか」が簡単にわかる仕組みがあれば、「実施した省エネの効果がどのくらいあったのか」を測ることができるようになります。また、どこに無駄や改善の余地があるのかを分析することで、より効果的な省エネを実施することができます。

“電力の見える化”は、たとえるなら、ダイエットでの体重計です。体重の変化が目に見えてわかるからこそ、試行錯誤しながら継続してダイエットを進めることができます。

当社オフィスにも、ビル既存センサの計測値を活用した見える化のシステムを導入しています。通常よく実施する、複数の分電盤へのセンサ設置や配線引き回しなどの大規模な工事が不要なため、比較的安価にシステムを導入することができました※。以下はサイネージ画面に表示している見える化の画面です。日時、天気情報、室内代表温度、CO2排出量、消費電力量、消費熱量の見える化を行っています。なお、当社が入居するオフィスビルは空調用に冷水や温水を使用しているので、消費熱量の見える化も行いました。冷房温度を緩和すると、冷水の使用量が減少するため、消費電力ではなく消費熱量の削減となります。本システムにより、省エネの取り組みの効果把握や、執務者の環境意識醸成を図っています。
(※設備状況によっては、導入できない施設もあります。)

■ただのコスト削減ではない、省エネの取り組みは持続可能な社会への貢献

すぐにできる地道な取り組みから、少し視野を広げると、「どうすれば燃料価格の変動に影響されない電力を確保するか」という検討も重要になってきます。中でも「再生可能エネルギー(再エネ)」の活用は、国際的な潮流となっています。

風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電が普及していけば、天然ガスや石炭といった輸入依存の化石燃料を使用しないエネルギーの自給自足が実現します。このような取り組みは、エネルギーを安定的に確保する「エネルギー安全保障」の観点からも有益ですし、結果的に持続可能な社会をめざすSDGsに企業が貢献することにもつながります。一方、このような再エネ導入と比較すると地味に見えますが、電気の使用量を削減する省エネも重要な取り組みです。省エネにより、化石燃料の使用量を減らすことで温室効果ガスの排出量削減につながるため、「再エネ導入」と「省エネ」は両輪で推し進めることが必要です。

電気料金がしばらく下がらないことを想定すると、柔軟な発想で小さな取り組みを積み重ねていくことが重要です。省エネに向けて、いろいろな方法を実施し尽くしたと思っても、まだまだやれることはあるかもしれません。ただ、成果を追及するあまり我慢を強いる過度な省エネは長続きしないと考えます。当社でも「社員参加型で無理のない活動を行うことが、継続していくために重要」と位置づけ取り組んでまいります。