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2023年07月18日

街の活気に触れよう!全国お祭り特集(2023年|納涼版)

大地の芽吹きや生命力が感じられる春祭り、恵みや実りに感謝する秋祭りもいいけれど、
やっぱり、お祭りは夏!というみなさんも多いのではないでしょうか。
JTB、トリップアドバイザーが発表した今年の夏の旅行動向(*)を見ると、
夏休みやお盆の人出は昨年比で大幅アップ、海外からの旅行客も増え、
コロナ禍前の完全回復とまではいかないものの昨年に比べたらかなりの人出になるようです。
文字通り夏本番に向けて急ピッチで準備が進む、各地のお祭りから、今回は岩手県盛岡市の「盛岡さんさ踊り」、
京都府京都市の「姉小路行灯会」、東京都杉並区の「東京高円寺阿波おどり」の3つを紹介します。
これら3つの地域で行われるお祭りの運営元に、現在の状況と開催への意気込みを取材しました。
気になるお祭りは、今からでも旅行先の検討に加えてくださいね。

(*)


JTB『JTB調べ!2023年夏休み(7月15日〜8月31日)人気方面ランキング』


トリップアドバイザー『トリップアドバイザー、2023年夏の旅行動向を調査』

岩手県盛岡市|天下一の太鼓と華麗な踊りが織りなす「響宴の輪」

「最も大人数による和太鼓の同時演奏者数(Largest Japanese drum ensemble)」のレコードホルダーとしてギネス世界記録に登録されているお祭りの団体を、みなさんはご存知でしょうか。2014年6月、岩手県営運動公園陸上競技場を舞台に県内外から有志が集まり、3,437人が5分以上同じビートを打ち続けて見事記録達成となりました。東日本大震災後に岩手・盛岡の元気を世界に発信しようと記録に挑戦し、これを束ねたのが「盛岡さんさ踊り実行委員会」です。記録を達成するほどの人数・太鼓を集める作業は困難を極めました。また、人数・太鼓が集まったとしても、3,000⼈を超える人々が⻑時間⼀⻫に⾳を合わせるのは至難の技。この記録は、和太鼓によるグルーブの一体感では名実とも天下一といえるでしょう。

 さて、この演奏を実際に目にする機会となるお祭りが、今年8月1日~4日に盛岡市中央通を主会場として開催される「盛岡さんさ踊り」です。太鼓や笛といった鳴り物と踊り手で構成された各種団体が参加し、それぞれの趣向で「統一さんさ踊り」の演目2番「七夕くずし」、3番「栄夜差踊り」、4番「福呼踊り」、5番「吉希翔」をパレード形式で披露。最終日の8月4日には、先に述べた世界記録に関連する特別プログラムとして、各参加団体からの太鼓演奏者が集結する「世界一の太鼓大パレード」も開催されるなど、4日間にわたって盛岡の夏の夜がにぎやかに彩られます。コロナ禍前の2019年開催(第42回)では、4日間の開催でのべ253団体、人出は149万1千人だったというこのお祭りは、コロナ禍のあおりを受けた2020年と2021年を開催中止としたものの、2022年(第45回)は縮小規模での開催を決行。この回では、「久しぶりに盛岡の夏が楽しめた」、「さんさ踊りの本来の良さが感じられた」と参加者・観覧者双方からの反響が多く寄せられたそうです。

 「さんさ踊り」とはそもそも、南部藩政時代から盛岡一帯の地域住民に親しまれてきた各種の盆踊りや謡いであり、その装束やお囃子は地域色を反映して、今日までバリエーション豊かに継承されています。「伝統さんさ踊り」と総称されるこれら各地の踊りを手本に「誰でも踊れるように」とアレンジ・創作されたのが「統一さんさ踊り」であり、一般参加団体は前述した2番から4番のいずれか(もしくは複合)を練習して、お祭り当日のパレードに臨みます。「盛岡さんさ踊り」は、各地域で大切に伝えられてきた伝統の踊りと、みんなが輪になれる現代風の踊りとが共生する、懐の深いお祭りなのです。

 46回目となる今年は、盛岡青年会議所による花車パレードや輪踊りといった個人でも参加できる自由参加枠が復活、過去水準に戻るのはまだ先としながら、「来て、観て、魅せられ、加わるさんさ」のキャッチフレーズに沿って通常規模開催の準備を進めていると実行委員会はいいます。今年1月に米ニューヨークタイムズ紙の電子版に掲載された「2023年に行くべき52カ所」のランキングで、ロンドンに次いで2番目に紹介され、旅行先としての注目度が急上昇中の盛岡市。「伝統さんさ踊り」を観に訪れるもよし、「統一さんさ踊り」の輪に入るもよし、夏の気分を一緒に盛上げに出かけましょう。

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##お祭りDATA##
・盛岡さんさ踊り(岩手県盛岡市)/第46回
開催日程:2023年8月1日(火)〜4日(金)
会場:盛岡市中央通(岩手県公会堂前〜映画館通り)および盛岡市民文化ホール「マリオス」
見どころ:【1】2023ミスさんさ・さんさ太⿎連、伝統さんさ踊り団体、一般参加団体が次々に行進する大パレード(中央通/各日18時〜21時)、【2】各種団体の振付や装束などをじっくり鑑賞できる「伝統さんさ踊り競演会」(盛岡市民文化ホール/各日13時〜16時)

*有料観覧席の事前販売あり(公式サイトを参照)
*個人参加可能なプログラムは各⽇の青年会議所花車パレードと、パレード後の「輪踊り」「大輪踊り」。各プログラムへ飛び入り参加も可能だが、16 時から事前練習会を行い、そのまま当日のパレードに参加する「おへれんせ集団」(要事前予約・先着順)か、17時から当日参加可能な練習会(予約不要・参加無料)で指導を受けてから参加するとより楽しめそう


「盛岡さんさ踊り」参加方法

お祭り公式サイト

京都府京都市|京都の町衆の「暮らし」や「営み」を肌に感じる行灯会

 「商業のための建築・環境」というカテゴリで2021年度グッドデザイン賞を受賞した「新風館」は、京都市における目抜き通りの1つ「烏丸通」を西側に面するホテル・店舗・映画館の複合施設です。旧京都中央電話局(京都市指定・登録文化財第1号)の外観を残しつつ、再々開発によって周囲のストリートとも回遊性を高めて、新たなにぎわい拠点として生まれ変わりました。この建物の北側を西端として、東端となる寺町通まで700mほどの落ち着いた町並み「姉小路通」が続いています。8月下旬の夕暮れ時、この「姉小路通」を行灯の柔らかな灯りが照らし出す、そんなお祭りが「姉小路行灯会(あねやこうじあんどんえ)」です。

 新しい「新風館」の開発に参画したデザイナーの1人でもある隈研吾氏の談によると、「姉小路通」を「京都らしい」と表現しています。事実、西端には1804(文化元)年創業の亀末廣(京菓子店)、東端には1663(寛文3)年創業の鳩居堂(香・和文具専門店)が店を構え、道中には竹内栖鳳や富岡鉄斎、魯山人など文人墨客に所縁のある老舗の商店や旅館が点在。京都の伝統を育む職人の工房や町家が数多くあり、北側に並行する「御池通」の景観とはまた異なる京都の一面を「姉小路通」に見つけることができるでしょう。

 「姉小路行灯会」の始まりは今から26年前の1997(平成9)年に遡り、当初は「灯りでむすぶ姉小路界隈」といいました。当時の町内最古老から古い行灯を寄贈されたことをきっかけに、「姉小路通」に接する複数の町の住民が集う「姉小路界隈を考える会(以下、考える会)」が企画したライトアップイベントが今日に続いています。「姉小路行灯会」は町の風習でもある「地蔵盆」とは別行事ではあるものの、その前夜に開催されることから子どもの成長や町内の安全を願ったり、先祖や故人を偲んだり、揺らぐ灯りの時間を住民は思い思いに過ごすそうです。

 「姉小路行灯会」は“考える会”が主催し、地域の建築協定範囲内で行われます。この協定は、行政のトップダウンではなく住民自身が江戸時代の町式目(自治の取り決め)を参考に策定した6項目の「姉小路界隈町式目」を基本理念とし、2002(平成14)年に初めて締結されたもの。この「姉小路界隈地区建築協定」の締結は2004(平成16)年の景観法制定以前のことであり、京都市の都市計画における“まちづくり”の先例となったといいます。20年の節目となった2022(令和4)年の協定更新には、車屋町通まで範囲を拡大して東西570mをカバー。商業地域にあって国内最大規模の建築協定になったと“考える会”の事務局長 谷口さんは胸を張ります。この570mの路側帯に600基もの行灯が並ぶ「姉小路行灯会」、町衆の思いや願いのこもったこの路地へ、残暑の夕涼みに出かけてみませんか。

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##お祭りDATA##
・姉小路行灯会(京都府京都市)/第26回
開催日程:2023年8月19日(土)17時ごろ〜20時
会場:京都市姉小路通
見どころ:
【1】京都市立中京もえぎ幼稚園、京都市立京都御池中学校、姉小路界隈のみなさんによる手描き行灯600基の町並みライトアップ
【2】京都御池中学校マーチング(17時〜)
【3】京都市内でも珍しい老舗の木彫看板
【4】地域のまちづくりを象徴して24時間灯り続けるガス灯

*行灯に灯すろうそくは姉小路界隈50店舗の賞品抽選付きで販売中
 1セット1,000円(ろうそく5本+賞品抽選権、遠方販売可)。
 販売締切:2023年8月17日(木)、公開抽選:8月18日(金)
 景品:トップ賞30,000円のペア食事券ほか界隈店舗からの協賛約200品
*ろうそくの遠方購入は事務局へ直接連絡:tani@aneyakouji.jp(事務局長・谷口氏)


「姉小路界隈を考える会」公式サイト

東京都杉並区|「地域」と「連」と「観客」が高円寺に熱狂の渦を生む

 東京23区のなかでも杉並区へ観光目的で訪れる人は少ないかもしれません。北に練馬区、南に世田谷区、西に武蔵野市・三鷹市と隣接する杉並区は住宅都市として発展してきた側面が強く、関東都市部を知らない人にとっては漠然としたイメージなのではないでしょうか。しかし、そんな杉並区にあって年に1回、100万人を超える観客を集める熱狂的なお祭りがあります。それが「東京高円寺阿波おどり」です。

 高円寺といえば、東京でも昭和のサブカルチャーを牽引する街の1つであり、近年では中央線カルチャーの一角を担うディープな街として注目を集めています。こうした個性的な魅力を支えているのが、JR高円寺駅を中心に広がる多彩な商店街にあるといっても過言ではないでしょう。13の商店街からなる高円寺商店街連合会の公式キャラクター「サイケ・デリーさん」からも、それが色濃く伝わってきます。おじさんのようなつぶらな瞳のヒゲ面で頭にターバンを巻き、足袋を履いて阿波おどりのステップを踏んだ姿をしているこのキャラが象徴するように、商店街と阿波おどりとは、高円寺を語る上で切っても切れない間柄といえそうです。

 「東京高円寺阿波おどり」は1957(昭和32)年、現在の高円寺パル商店街振興組合に青年部が結成されたことをきっかけに、「まぁ、なんとかなるだろう。やってみようじゃないか」という勢いそのまま「高円寺ばか踊り」という形で始まりました。当初は見聞きした踊りや装束で本場の阿波おどりとはかけ離れたものだったそうですが、やがて本物の阿波おどりを求めて東京で最も古い阿波おどり連である徳島県人会「木場連(現・天恵連)」の指導を請い、1963(昭和38)年開催の第7回大会に“高円寺阿波おどり”として改称されました。その後、“高円寺阿波おどり”を「地域」と「連」と「観客」の三位一体で支えていくことを目的としたNPO法人 東京高円寺阿波おどり振興協会が2004(平成16)年に設立され、現在に至ります。この協会のもと、商店街だけでなく関連自治会や踊り手を中心とした高円寺阿波おどり連協会、ボランティアや賛助会員などが活動の担い手となり、コロナ禍前の第63回大会では2日間の会期中のべ164連、観客動員数約101万人という規模を誇る、関東屈指の阿波おどり大会までに成長しました。

 2020年は完全中止、2021年は無観客による屋内舞台公演(オンライン配信)、2022年は観客を入れての屋内舞台公演、そして今回が2019(令和元)年に続く、第64回大会となります。コロナ禍の影響を受けたこの3年間、各所で運営経験者が交代になったり、近隣居住者の入れ替わりが進んだりと悩みは多かったようですが、ようやく4年ぶりの完全復活で、この大会運営にかける意気込みが強く伝わってきます。協会によると現時点で予定されている参加連はのべ155連で、ほぼ前大会の規模での開催を想定して準備を進めているそう。夏を締めくくる8月4週目の週末は、ぜひ高円寺の阿波おどりに気合を入れて出かけましょう!

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##お祭りDATA##
・東京高円寺阿波おどり(東京都杉並区)/第64回
開催日程:2023年8月26日(土)27日(日)
会場:高円寺駅周辺の各種街路、およびセシオン杉並ホール(各日2部制、第1部11時30分開演、第2部14時開演)、座・高円寺1(各日2部制、第1部12時開演、第2部14時30分開演)
見どころ:
【1】各種街路に設定された8つの演舞場(各日17時〜20時)を舞台に競われる各連による演舞
【2】ショッピングや散歩をしながらでも観覧できる早い時間の街路演舞(各商店街の地元連が散発的に舞う:各日13時〜16時)
【3】じっくりと連の踊りを鑑賞できる2つの舞台公演


*街路公演には演舞場に併せて8つの特別観覧席が設けられます  特別観覧席の入場券は大会の担い手として協賛した支援者への配布のみ  協賛金の申込みは7月3日から「高円寺MATSURIチケットセンター」

*舞台公演は以下の2開催です
 1:「おどれ高円寺セシオン2023」(場所:セシオン杉並ホール)
 2:「2023夏の座・高円寺阿波おどり」(場所:座・高円寺1)
 チケット詳細は公式サイトで確認

お祭り公式サイト

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 藩政から地域ごとに受け継がれてきた地踊り(伝統さんさ)とは別に、誰もが踊れる“さんさ”を「統一さんさ」として練り上げ、これを両立させているのが「盛岡さんさ踊り」のスゴさだと取材から感じました。装束や太鼓などの鳴り物は盛岡市内の各店で揃えられますし、「盛岡さんさ踊り」は「盛岡市」のファンが広がる仕組みとして、しっかり機能しているように思います。なるほど、海外から注目されるのも納得ですね。

 京都市・姉小路通りの「姉小路行灯会」は、静かで落ち着いた暮らしや脈々と続く営みを後世まで守りたいという住民自治の心意気を体現したタウンイベントといってもよいでしょう。昨年拡張した建築協定の範囲には、風俗店や社交場・娯楽場、コンビニのほか、家主が同居していないワンルームマンションは1軒もなく、過去20年、1度の違反者もありません。人の縁を場所と時間でつなぐ、住む場所は自分で守る、そんな思いが行灯の火に込められているようです。

 「高円寺ばか踊り」として始まった「東京高円寺阿波おどり」ですが、本物を求めて研鑽を詰んだ結果、正統スタイルを継承する連、バラエティ豊かな連が参集する大きなお祭りとなっています。運営であるNPO団体はその性格上、阿波おどりの普及啓蒙や友好都市との交流のため、普段から国内外との交流を重ねているそう。これらもまた、「東京高円寺阿波おどり」が大きく成長してきた理由の1つといえそうです。

 お祭りを観る・参加するというのは、各地の良さを知るための手がかりになります。この夏は非日常を体験したり、終の住まいを探したり、さまざまな目的をもってその土地、そのお祭りを巡ってみてはいかがでしょうか。


*免責事項:掲載内容は2023年7月16日時点の情報です。最新情報は各公式サイトや旅行サイトで事前確認をお願いします。


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