お役立ちコラム

プロパティマネジメント

2023年06月29日

環境負荷ゼロをめざして -お客さまとともに-

 省エネ法は、SDGs や ESG経営に取り組む企業にとって注視すべき法律であり、エネルギーの効率的な利用と消費量の削減を図るためには欠かせない指針となる法律です。この法律により、一定以上のエネルギーを使用する事業者は自社のエネルギー使用状況を把握し、削減計画の策定、計画の実施および報告が義務付けられています。これまでは化石エネルギーの使用を対象としていましたが、2022年5月の改正で非化石エネルギーの使用も対象となりました。今年7月末日には新制度に基づく中長期計画書提出の期限を、来年2024年7月には同じく新制度に基づく定期報告書の提出期限を迎えます。今回の記事では、この4月に施行されたばかりの改正省エネ法の概要と、当社を含むグループの取り組みを併せて解説します。

省エネ法の概要と2022年改正で知っておくべきポイント

 オイルショックをきっかけに1979年(昭和54)に制定された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」のことを「省エネ法」といいます。その目的を端的にいえば、エネルギー使用者にその効率的な利用や消費量の削減といった合理化を求め、国民経済の健全な発展を促すことにあるといえます。省エネ法が対象とするエネルギーは、下表で示す通り、この法律の根拠から化石由来のエネルギー(燃料、熱、電気の3つ)を対象としていて、2022年の法改正まで、非化石エネルギーは対象外でした。

*法律用語の解説*
・省エネ法がその目的に掲げる“エネルギーの使用の合理化”とは、エネルギーの使用に、より少ないエネルギーで同一の目的を達成するために効率の向上を図ることをいいます。
・2013年改正では、東日本大震災の際の電気需要ひっ迫を受け、“電気の需要の平準化”が省エネ法の目的の一部として明文化されました。この意図は、季節または時間帯による電気の需要変動を縮小させることにありました。

■2022年改正省エネ法のポイント

 法改正にあたって主眼に置かれたのは、2050年カーボンニュートラル目標や、2030年の温室効果ガス削減目標46%減(2013年度比)といった政府目標です。これらを踏まえて国内のあらゆる事業者は、経営の努力目標としてエネルギーを使用する際の合理化、効率化に努めることが期待されています。エネルギーの需要側におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みの方向性は、以下の図がわかりやすいでしょう。

 2022年5月の改正で省エネ法は、これまでの名称を改め「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」となりました。つまり、名称に表れている通り、化石エネルギー/非化石エネルギーを包括したエネルギー全体の合理化と、非化石エネルギーの使用割合を推し進める法律へと変わったことがわかります。2023年4月1日に施行された省エネ法は、この改正省エネ法のことをさします。なお、この改正で非化石電気の需要と供給増加を見込み、“電気の需要の平準化”は“電気の需要の最適化”を促す方針へと見直されました。

 この改正で特に注意すべきなのは、原油換算で1,500kl/年度以上のエネルギーを使用する事業者(特定事業者等)、200台以上のトラックや車両を保有する事業者(特定貨物/旅客輸送事業者)、年間3,000万トンキロ以上の輸送を扱う事業者(特定荷主)です。いずれも国への報告義務が必要な対象者であり、これまでの計画・報告義務に加え、非化石エネルギーに関する取り組み報告義務や、電気の需要の最適化を実施した日数の報告が課せられることとなります。


・詳しくは、経済産業省資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」をチェック

 特定事業者(報告義務のある事業者)は、今年7月には新制度に基づく中長期計画書の提出を、来年7月には新制度に基づく定期報告書の提出が求められますから、現状対応を急ぐお客さまもおられることと思います。報告義務のない事業者は努力義務ではありますが、上記のように2030年目標、2050年目標に向かって全体のエネルギー使用量を抑えるため、省エネの強化と再エネへの転換が国内事業者には強く推奨されていることを知っておくべきでしょう。社会の脱炭素化への取り組みは、まったなしなのです。

■計画の実効性が問われる「事業者クラス分け評価制度」

 特定事業者は定期報告書をもとに、国から客観的に次のような制度で計画の実効性が評価されます。目標に対する進捗が公開される仕組みとなっているため、これを経営指標の1つとして環境経営に取り組んでいる事業者も多いのではないでしょうか。ここで、その制度について触れておきましょう。

 経済産業省資源エネルギー庁の「省エネポータルサイト」では、定期報告書の内容からS・A・B・C の4クラスに分類する「事業者クラス分け評価制度」を背景に、同タイトルのサイトページにてその評価結果を毎年公表しています。クラス分けの基準は下表の通り。

 Sクラスのみが目標達成事業者であり、Aクラス以下はいずれも達成していない事業者という位置づけです。Bクラスの事業者には注意喚起文書が送付され、現地調査等が行われる可能性があり、Cクラスの事業者に至っては行政指導が下されるといいますから、報告義務のある事業者は、事業運営にかかるエネルギーの消費動向を常に気を配る必要があります。こうした実効性をともなう施策に鑑みても、2030年目標、2050年目標に向けた国内エネルギー政策の強い意志を感じられるのではないでしょうか。 

 社会の脱炭素化は、地域の街づくりを念頭に事業を進める当社、ならびに私たちグループ企業にとっても、重要な経営課題の1つです。そこで次の段落では、グループの取り組み状況や、今後のビジョン・事業についてお伝えします。

カーボンニュートラル目標達成に向けてお客さまとともに力強く前進

 環境負荷低減の世界的な潮流と符合するように、NTTグループでは現在、2021年9月に環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を公表し、電力削減量の削減と再生可能エネルギー(以下略、再エネ)の利用拡大に努めているところです。これに追随し、当社が属するNTTアーバンソリューションズグループでは、2022年3月に環境負荷低減目標を定めたのち、2030年度に向けた温室効果ガス削減目標について、SBT(パリ協定に準拠した科学的根拠に基づいた企業の温室効果ガス排出削減目標)の認定を同年12月に取得しました。今回認定された目標は、①スコープ1,2 2030年度に2020年度比で排出量80%削減(1.5℃目標)②スコープ3 2030年度に2020年度比で排出量45%削減〔スコープ3全体の約70%をカバーするカテゴリ11(販売した製品の使用)〕であり、具体的な施策をさらに推進しています。

・NTTアーバンソリューションズグループ環境負荷低減目標(下図)

・スコープ1:NTTアーバンソリューションズグループでの燃料の使用等による温室効果ガス直接排出量
・スコープ2:NTTアーバンソリューションズグループが購入した電気・熱の使用による温室効果ガス間接排出量
・スコープ3:その他事業活動にともなう温室効果ガス間接排出量(建物の建築工事や販売した不動産・物品の使用等)


 グループ会社のNTTファシリティーズ、NTT都市開発においては、先に示した「事業者クラス分け評価制度」において、2021年度、2022年度と2年連続でSランク評価を受けました。今後の新規竣工物件については、開業時から全館再エネ電力の導入が検討・計画されています。サプライチェーンの一員である当社としても、こうしたグループの取り組みや、お客さまの環境負荷低減の活動をさらに後押しし、地域社会の脱炭素化にますます貢献していきたいと考えています。

 以前このコラムでも紹介した「WITH HARAJUKU」や、東京駅近隣の大型オフィス複合ビル「大手町プレイス」などでは、各ビルの使用電力を再エネ由来の電力へと切り替えを図り、すでに全館の再エネ化を達成するなど、既存の施設においてはテナント貸室も含めて順次、再エネ電力供給の転換が進行中です。

 また、管理ビルに入居するお客さまの事業活動が活発化してもなお、省エネ効率をさらに推し進め、同時に目標とする再エネ利用の導入拡大が図れるよう、お客さまのESG経営を積極的にサポートすることも、当社にとっての欠かせない事業活動の1つです。今期より当社では、「CNコンシェルジュ」と称した、カーボンニュートラル(CN)の取り組みに関しての相談窓口を設けました。小売電気事業者や一般電気事業者が提供する非化石証書※を利用した再エネ電力メニューの採用、場合によっては、再エネ100%で稼働するビルへの移転など、ご希望に沿った選択肢でエネルギー活用をご提案することが可能です。自社のエネルギー施策に課題のあるお客さまはどうぞお気軽にご相談ください。当社の知見を共有しながら、可能な限りお客さまの事業をサポートし、地域社会全体の脱炭素化をともに前進させたいと考えています。

※2021年11月の制度改正により、一般需要家でもJEPX(一般社団法人 日本卸電力取引所)非化石価値取引会員となることで、FIT非化石証書の直接購入が可能となりました。2022年1月、NTTグループの一般需要家として初めて(小売電気事業者のエネットに次いで2番目)、NTTアーバンバリューサポートはJEPX非化石価値取引会員となりました。