お役立ちコラム

人が集まる魅力的で新しい店づくり|都心部駅前SCの事例から (前編)

大都市の繁華街から人の賑わいが減った2020年初夏、東京はJR原宿駅前という立地に「WITH HARAJUKU(以下ウィズ原宿)」が開業しました。オープン直後はただでさえ想定外のことがおこりがちな時期。それに加えて、新型コロナウイルス感染症の発生動向やそれに伴う行動制限など、日本全体の情勢を見極めながらのかじ取りは前例がないほどの困難を極めました。 このような状況は異例とはいえ、今後二度と起こらないという保証はありません。新たな感染症や災害など、めまぐるしく変化する状況においてプロパティマネジメント(以下PM)に求められるもの、また、開業から満3年を迎えようとしている現在、ウィズ原宿に集う来館者や集客を保つ工夫とは何か。

同ビルのPM担当として、オーナーやテナントのニーズを汲み取りながらハードの面からもソフトの面からも施設を充実させ、また、地域と協調し地域活性化に貢献することでビルの価値の維持・向上に奮闘する、首都圏商業担当 鵜木と斉藤の両名に語ってもらいました。









【首都圏商業担当の鵜木(左)と斉藤(右)。開発段階からウィズ原宿に関わっている】

都心部駅前の立地に新しい魅力をつくる

 ウィズ原宿が建つのは、明治神宮に臨む原宿駅のまさに目の前。以前は「原宿アパートメンツ」や「原宿第一マンションズ」などが建っていた土地です。2014年に用地を取得、当初は2020年の東京オリンピック・パラリンピック前の開業をめざして開発が始まりました。

 ウィズ原宿は、低層にコトやモノを発見・発信する商業施設、中層に交流を生み、文化を発信するホール・コワーキングスペース、高層に賃貸レジデンスを配した複合施設であり、原宿駅前と竹下通りが通り抜けできるよう、パッサージュと呼ぶ歩行空間で低層と中層がつながる構造となっています。コンセプトは「未来を紡ぐ“たまり場”」。1960年~1970年代、最先端をいくクリエーターたちが住まい、働き、集い、遊ぶことで、ファッションや若者文化の発信地として日本を代表する街となった原宿で、今ふたたび人と人が交わり、創造し、世界へ向けて発信する場を創りたいという意図が込められました。
 
 建物の顔となる低層の商業ゾーンには、IKEAやユニクロ、資生堂、スターバックスコーヒーといった世界的に人気のある厳選された店舗を誘致。原宿から表参道というすでに独自の魅力を確立しているエリアの玄関口としてはもちろん、新宿や渋谷といった巨大な商圏、さらには近年人気の大久保~新大久保エリアも視野にいれつつ、魅力的な“街”づくりを進めてきました。

 ところが、2020年初頭から世界的な広がりを見せた新型コロナウイルスの影響を受け、開業は当初予定の4月から6月へ延期に。しかも、「3密(密閉、密集、密接)」を避ける観点から、グランドオープンではなく区画ごとの順次開業を余儀なくされたのです。この決定に関しては、鵜木氏と斉藤氏を中心に、PMを担当したNTT都市開発ビルサービス(当社の前身)と、開発を担ったNTT都市開発との間で何度も協議がもたれ、各テナント企業とも綿密な擦り合わせが行われました。

鵜木:「オープンの日時だけでなく、来店されたお客さまをどこにどういう列を作って並んでいただくか、整列の人員は何人どういう形で配置するか、整理券は配るのか、消毒や検温の設備はどうするかといった細かいことを一店舗ずつ交渉していくのはかなり骨の折れる作業でした。また、『原宿駅前に大型施設が建つ、しかもこのコロナ禍で』ということで、メディアも注目する船出となったことから、各テナントのスタッフの動線や搬入についてなど、平時であればさほど問題にならないことにも細心の注意を払わなければいけませんでした。万が一クラスター発生につながるようなことになると原宿エリア全体に影響が及びかねませんから」

 こうした綿密な準備の結果、2020年6月5日から6月25日にかけて、ウィズ原宿の14のショップとレストラン、ポップアップスペースが無事オープンすることができました。幸い、各階層がパッサージュで緩やかにつながっているという構造のおかげで、部分的にオープンしているという状態が来店客の違和感につながりづらく、むしろ「来るたびに新しい店舗ができている」という期待を持って捉えられたのでは、と鵜木氏は分析します。

 その後、さらなる感染対策のノウハウを積み重ねながら、2023年に3周年を迎えようとしています。

人が集まる店づくり・場づくり

 ウィズ原宿の開館時間は7:30~23:30と、商業施設としてはかなり長めです。それは、原宿という街の特徴に関連しているよう。

斉藤:「原宿はショッピングエリアというイメージが強いのですが、住宅街でもあります。集合住宅や一軒家がたくさんあり、早朝はそうした近隣の方たちにご利用いただくことが多いです。その後、観光やショッピングを楽しまれた方や小さなお子様連れのファミリーのランチタイムを経て、一番賑わうのは14時~16時ぐらい。この時間は若者が多いですね。そして、イベント終わりの友人同士や会社帰りの方たちのディナータイム。つまり、一日のなかで、それぞれ違う客層の方たちが異なる需要を持って来店されます。開館時間を長くしておくことで、さまざまな需要に対応でき、街での居場所づくりをしているというわけです」
 
 もともと近隣で表参道沿いにある「原宿クエスト」のPMを担当していた経験から、客層とそれぞれの需要の仮説を立てて開館時間を長めに設定していましたが、改めてそれが実証されたということです。さらには、朝にインバウンドのお客様が原宿に訪れていることがわかったことから旅行会社との協業を模索したり、今までは表参道、竹下通りや裏原宿で過ごした後そのまま帰宅していた方たちが、ウィズ原宿で食事や買い物をして原宿駅から帰るようになるなど、ウィズ原宿ができたことによる人の流れの変化を少しずつ実感していると斉藤は言います。

 その流れをさらに加速するべく、ウィズ原宿ではさまざまなイベントを開催。施設主催の企画だけなく、テナントからも積極的に企画が上がるのは、各テナントが「ウィズ原宿でイベントを行うこと」にメリットを感じているからにほかなりません。ウィズ原宿側は魅力的な空間を提供したり、運営のサポートを行ったりすることで各テナントのブランド価値向上に貢献し、それがひいては施設全体の来客数増にもつながるという、双方にとって良い効果をもたらしているようです。

 さらには、「WITH you」と題して、2022年から共用スペースを利用したワークショップやイベントの企画を募っていて、この取り組みは現在も継続中。表参道エリアへ向かうお客さま、竹下通りを目的に来たお客さま、そして各種イベントのために来店したお客さま……さまざまな客層がウィズ原宿で出会い、さらに企業や団体とコラボレートもできる。単なる商業施設の枠を超えた、まさに“たまり場”のように楽しい場所だからこそ、創り出されるものもあるでしょう。

 また、ウィズ原宿では街を構成する一員として、行政・地域団体との連携・共生に努めています。例えば、原宿はハロウィン発祥の地の1つと言われていますが、ここウィズ原宿でも地域が大切にしているシーズンイベントに積極的に参画し、相乗効果をあげるべく施設内イベントも企画しているそう。ゴミ拾いボランティアや祭り運営スタッフとして参加するなど、地域の美化や共同体の維持に関わる取り組みも積極的に行っています。

斉藤:「これからの時代、商業施設が単独で何かを創り出そうという発想ではなく、商業施設があることで地域活性のお役に立つ、それがエリアの独自性の長期的な維持・発展につながり最終的に利益として還元されるというのが理想ですね。特に原宿のような特色がある街をリスペクトし、ご一緒していくことが重要だと思います。逆にそうしていかなければここに建っている意味がない。そして、地域と商業施設のパイプ役となるのが、私たちPMの役割の1つでもあります」

 リーシングキーワードに掲げた「TOKYOの新たなプレゼンテーションステージ」として3周年を迎えるウィズ原宿。建て替え中の「原宿クエスト」のリニューアルオープンを2025年に控え、当社としては、ますます地元へのコミットを高めていきたいと考えています。原宿の街がいつも新鮮で輝いて見えるのは、起伏のある道、特長のある店があるばかりではなく、街に関わる人たちの思いや記憶が幾重にも重なって現れているから。世界に誇れる街であり続けられるよう、この先も地域とともにこの街の歴史を紡いでいきます。


後編では、各テナントの業務効率化のための取り組みやそこで働くスタッフへのサポート事例を紹介します。
次回のコラムもご期待ください。

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